前回に引き続き、今回は実際にどのようにブランドが立ち返る場所を言葉で表現するのかについて、解説していきたいと思います。

ブランドに必要なステートメント(宣言)

自分たちの会社がなぜ活動をしているのか、ということについて、改めて言葉にするのはやってみると意外と難しいものです。

ただ、どんなビジネス活動も、事業をしている目的があるはずです。
「ウチはお金が儲かればどんなことをしても構わない」と本気で考えている会社は無いと思いますし、あったとしても会社として長く存続はできていないはずです。

本来、ビジネスは世の中に向けて行うものですから、どんな会社でも必ず目的があり、世の中に影響を与える存在である以上、使命や価値観があるはずなのです。

もちろん、ビジネスを始めた当初は、様々な創業メンバーの想いが言葉として整理されておらず、ぼんやりしていることがほとんどです。
しかし、「自分たちのことは知らなくても良いので、商品やサービスだけ買ってください」と言ってお金を払ったり、ファンになったりする人は普通はいません。

お客様に「自分たちを知ってください」とアピールしていくのであれば、自分たちが何をしようとしているのかを伝える必要があるのです。

サービス展開前からステートメントを作成していた「Uber」

Uberは2009年にアメリカで設立された、今や世界中で自動車配車サービスを展開している世界で最も急成長している企業のひとつですが、彼らはアメリカ国内でテストを行なっている段階でブランドステートメントを作成していたと言われています。

当時、Uberはサンフランシスコとシカゴでベータ版の発売の成功によって、本格的にアメリカ全体にビジネスを拡大しようと準備を進めていました。
会社の従業員や、サービスに登録するドライバー、ビジネスパートナーが増え始めていた時、自分たちの活動が何のために(目的)、何を(ビジョン)、どうやってやるのか(ミッション)を定義し、活動の意図を明確する必要があると考えたのです。

目的: 世界の移動方法を進化させます。

ミッション: 利用者をアプリでシームレスに接続することで、都市へのアクセスを改善し、ドライバーの可能性とビジネスを拡大します。

ビジョン: 主要な米国の大都市市場で有料の乗り物の市場シェアを40%獲得します。 

その後、Uberは自分たちが掲げた明確な目標の達成に集中した結果、当初目指していた、アメリカでのシェア40%という目標を数年で達成してしまいます。
さらに会社と個人が成長するために、2016年、2018年にビジョンとミッションを会社の成長に合わせて更新しています。

目的: 世界の移動方法を進化させます。 

ミッション: 私たちは、世界を動かすことによって機会に火をつけます。

ビジョン: より少ない車とより多くのアクセスでよりスマートな輸送。より安全で、より安く、より信頼できる輸送。より多くの雇用機会とドライバーのより高い収入を生み出す交通手段。

最初のものと比べると、言葉の表現に柔軟性が高まったことがお分かりいただけると思います。
現在は、アメリカ国内のシェアは69%と広がり、海外でも世界60か国以上で事業を展開しています。
また、フードデリバリー業界で25%のシェアとなったUberEatsの導入や、今後は自動車以外の交通手段にも広がりを見せようとしています。
そんな事業の多様化が進む中で、会社の環境の変化に合わせてブランドステートメントを更新することで、業界をリードしていくための活動に一貫性を持たせ続けているのです。

強力なブランドイメージをデザインするために効果的な有言実行

先にも述べたように、ブランドステートメント(宣言)は目的、ミッション、ビジョン等、会社によって様々な定義の方法があります。

それぞれ事業の内容や規模によって、自分たちが日々の活動に落とし込みやすい形で作成するのが理想的です。

【目的】

目的は、自分たちが存在する理由です。
明確な目的があることで、顧客だけでなく、優秀な人材や魅力的なパートナー会社を引きつけることにつながります

(例)
Disney
人の人生で最も特別な思い出の1つを作成すること。 

Twitter
みんなが聞いたり、見たり、自分の考えや経験をその場で共有できるようにします。

Microsoft
すべての人とすべての組織に、より多くのことを達成する力を与えます。

【ビジョン】

ビジョンは、会社が目指している目的地を目指すものです。
目的地が明確になることで、組織内で達成基準が生まれ、活力を与えることにつながるのです。

(例)
WalMart
2000年までに1,250億ドル規模の企業になる。

Microsoft
すべての机とすべての家にあるコンピュータ。実行中のすべてのMicrosoftソフトウェア。

GE
すべての市場で1位か2位になり、大企業の強みと中小企業の機敏性を兼ね備えたこの企業に革命を起こします。

【ミッション】

ミッションは、目的を果たすために、どのようなビジネス活動を軸とするのかを定義するものです。
詰め込み過ぎず、あらゆる活動に結びつく包括的なアイディアに焦点を当てることが重要となります。

(例)
Google
世界の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること。

Facebook

人々に世界を共有し、世界をよりオープンでつながりのあるものにする力を与えるため。

Amazon

お客様がオンラインで購入したいものを見つけて発見できる、地球で最も顧客中心の企業になること。

会社のあらゆる活動は、木の枝であり、最終的には全て一本の幹につながっている必要があります。
一貫性のない活動は、お客様の納得感を得ることができないため、自社が意図するブランドイメージを生み出すことができないのです。
そうならないよう、まず自社の活動の立ち返る場所を明確にし、宣言することでお客様だけでなく、社内も含めた期待と信頼の獲得を図るべきなのです。