なぜ、在庫は多いのに欠品はなくならないのか
──原因の仕組みと、自社で確かめる方法

倉庫は在庫で溢れているのに、営業からは欠品の報告が上がってくる。在庫を減らせば欠品が怖く、欠品を防ごうとすれば在庫が積み上がる──。この板挟みの状態を、私たちは「ねじれ」と呼んでいます。消費財・小売の中堅企業で最も多く、最も経営を消耗させる状態です。本稿では、なぜ在庫過多と欠品が同時に起きるのかを解き、自社のねじれの深さを数字で確かめる方法までを解説します。先に結論を言えば、ねじれは矛盾ではありません。同じ一つの原因が、在庫と欠品という二つのかたちで現れているだけです。だから、正しい場所に手を打てば、両方が同時に良くなります。

ねじれは矛盾ではない──在庫の「総量」と「中身」

在庫過多と欠品の同時発生が不可解に見えるのは、在庫を総量で見ているからです。SKU別に開くと、見え方がまったく変わります。売れないSKUに在庫が偏って積み上がり、売れているSKUの在庫が足りない。総量やその平均は「全体としては足りている」と語りますが、商売は平均ではなく個別のSKUで起きています。

ある調理家電メーカーでは、カラーバリエーションや容量違いといった派生モデルの在庫が積み上がる一方で、主力SKUは繁忙期のたびに欠品し、欠品起因の機会損失は推定で年間2.4億円にのぼっていました。帳簿の上では「在庫過多の会社」です。しかし実態は、売るべき商品が売るべき時に棚にない会社でした。在庫金額の総量だけを見ている限り、この実態は永遠に見えません。

偏在を生む原因は一つ──「判断の遅れ」

では、なぜ偏在が生まれるのか。業界や商材を問わず、原因はほぼ一つに集約されます。計画と実勢が乖離したあと、対応の判断が下るまでが遅いことです。

商品は計画に基づいて投入されます。そして計画は必ず外れます──外れること自体は異常ではありません。問題は、外れたと分かってから動くまでの時間です。売れ筋では、追加発注・増産の判断が遅れた分にリードタイムが上乗せされ、その間ずっと欠品が続きます。売れないSKUでは、発注・生産を止める判断が遅れた分だけ、在庫が積み増されます。つまり、同じ一つの「判断の遅れ」が、売れている商品では欠品となって現れ、売れていない商品では過剰在庫となって現れる。これがねじれの正体です。

判断はなぜ遅れるのか。私たちが診断で必ず確認するのは、次の3つの設計の有無です。

  • 判断──追加発注・生産調整・投入停止を「誰が・いつ・何を見て」決めるかのルールがあるか。ない会社では、判断は担当者の気づきと稟議の順番待ちに委ねられています
  • 検知──計画と実勢の乖離を捉えるのが、月次の締めの後になっていないか。締めてから気づく会社では、気づいた時点で既に1ヶ月遅れています
  • 責任──欠品の責任は営業、在庫の責任は生産・物流と分断されていないか。分断された組織では、各部門が自部門のリスクを避けて発注を厚めに積み、偏在はさらに進みます

RUNOSAでは、この3点──判断・検知・責任──を需給プロセス設計の中核に置いています。ねじれの根本原因は、需要予測の精度でも担当者のスキルでもなく、ほぼ例外なくこの3点のどこかにあります。

ねじれの発生構造

ねじれは、同時に直る

両側の症状が同じ原因から来ているなら、打ち手は一つです。判断を速くする構造を作ること。先の調理家電メーカーは、発売後14日以内に追加発注の可否を判定する売上初速の仕組みと、主力SKUの調達リードタイムを90日から45日に短縮する二系統の調達体制を作りました。結果、欠品起因の機会損失は2.4億円から0.6億円へ縮小し、同時に派生モデルの滞留在庫も17%減っています。

アウトドア用品の企業でも同じことが起きています。ブーム収束で滞留在庫が積み上がる一方、新商品では機会損失が出ていた状態から、初期投入を抑えて販売初速で追加を判断する実需追随型への転換と、チャネル横断で週次再配分するフリー在庫の仕組みによって、滞留在庫32%減と欠品率1.8pt改善を同時に実現しました。

在庫削減と欠品削減は、二者択一ではありません。この2つがトレードオフに見えているとしたら、それは判断の仕組みにまだ手が付いていないことの証拠です。

自社のねじれを、3つの数字で確かめる

データ担当者に依頼すれば半日で出る確認です。

  1. 在庫の偏在──在庫金額の上位20%のSKUが、全在庫金額の何%を占めるか。そのSKU群の直近3ヶ月の売上構成比と並べて比べる。在庫の構成比が売上の構成比を大きく上回っていれば、売れないものに在庫が偏っています
  2. 売れ筋の欠品──販売数量上位100SKUのうち、直近12ヶ月に月末在庫ゼロの月があったSKUがいくつあるか。1割を超えていたら、主力商品で売上を逃しています
  3. 判断の速さ──判断の速さ──直近の「追加発注」と「投入停止」の実例を1件ずつ取り出し、乖離が発生した月から判断が下りた月までの日数を数える。60日を超えていれば、ねじれの根本原因はほぼ確実に判断の遅れです

1と2が同時に該当すれば、御社でもねじれが起きています。損失を金額まで落とす手順は別稿「自社の在庫を、売上と在庫のデータだけで診断する方法」で全て公開しています。

まとめ

在庫過多と欠品の同時発生は、矛盾でも不運でもなく、判断・検知・責任の設計不足という一つの原因の二つの現れです。だからこそ、SKUの削り方や発注精度をいじる前に、設計に遡る必要があります。実務上の難所は、根本原因の特定に全SKU横断の分析が要ること、そして判断ルールの再設計は部門の権限に踏み込むため、問題の内側にいる当事者では判断しにくいことです。根本原因がどこにあるか──偏在と3つの損失の全SKUでの金額化は、売上在庫診断「URESUJI」が1日で特定します。特定した原因を設計と定着まで持っていく道筋は、需給・在庫プロセス改善コンサルティングをご覧ください。

本記事の引用・転載は、出典(株式会社RUNOSA・本記事URL)の明記のうえ、ご活用いただけます。

本記事に関連するサービス・資料