シーズンに売上が集中する事業の需給設計
──ピークの欠品と、シーズン明けの在庫を
同時になくす方法
中元・歳暮・クリスマス・バレンタイン・新生活・行楽シーズン──年商の3〜5割が特定の数週間に集中する事業では、毎年同じことが起きます。ピーク前の増産で工場と物流が逼迫し、ピーク本番では売れ筋から欠品し、シーズンが明けると売れ残った在庫と、稼働の落ちた工場が残る。そして反省会では毎年、「来年こそ予測の精度を上げよう」と締めくくられる。もしこの繰り返しの中にいるなら、問題の置き場所が違います。ピーク需給は、予測の問題ではなく、設計の問題です。本稿では、季節集中型の事業が組むべき3つの設計を、実例の数字とともに解説します。
「予測を当てる」が成り立たない理由
ピーク商戦には、やり直しの機会がほとんどありません。数週間に売上が凝縮するため期中の軌道修正が利かず、予測の誤差はそのまま欠品か残在庫として確定します。しかも季節品・限定品・詰め合わせは毎年構成が変わるのが宿命で、構成が変わるたびに単品の過去実績は使えなくなります。ある高級洋菓子メーカーでは、詰め合わせ(アソート)のSKUが200種類を超え、毎期の構成変更のたびに単品の需要予測がリセットされる構造になっていました。この条件下で予測精度を追い込んでも、得られる改善は数%です。発想を変える必要があります。予測を当てにいくのではなく、予測が外れても損失にならない構造を設計する。具体的には次の3つです。
設計①──供給の山を「時間軸」で崩す
需要の山は動かせません。しかし供給の山は動かせます。前倒し製造・保管(冷蔵・倉庫)・原材料の先行確保、この3つのバランスを設計し、ピーク直前に集中していた生産負荷を前方に分散させます。先の洋菓子メーカー(年商200億円規模、売上の約4割が4大ギフトシーズンに集中)では、年間4つのピークを月次・週次の生産計画に落とし込むS&OP──販売・生産・調達の数字を一枚に統合し、月次で意思決定する仕組み──を再構築し、労務ピークの裾野を3週間広げることに成功しました。結果、ピーク時の欠品率は3.8%から0.9%へ、そして平時の工場稼働率は68%から81%へ改善しています。ピークの欠品とシーズン明けの遊休は、同じ設計で同時に解けるのです。

設計②──SKUを「コア×可変」の二層に分ける
全SKUを同じ精度で予測しようとしないことです。SKUを二層に分けます。コア──毎年売れる定番の構成要素は、通年の予測モデルで平準生産する。可変──季節・限定・トレンドで入れ替わる部分は、予測せず、シーズン直前2週間の実勢情報で投入量を確定する。同社はアソート商品をこの「コア商品×可変商品」の二層で再設計し、構成変更に伴う計画工数を前年比45%削減しました。要点は、予測が必要な範囲を構造的に最小化することです。予測の対象を減らせば、残った対象の精度は自然に上がります。
設計③──ピーク時の配分を「ルール」にしておく
百貨店外商・店頭催事・EC・法人ギフト──チャネルが多層である事業ほど、ピーク当日の在庫の取り合いが発生します。この配分判断を当日その場の力関係で捌いている限り、声の大きいチャネルが在庫を取り、全体最適は失われます。やるべきことは、チャネル別の需要特性(確定受注型か、実勢変動型か)を平時に整理し、配分ロジックを文書化しておくこと。そして外商・法人ギフトのような先行受注情報を、需給計画そのものに組み込むことです。確定している需要を予測の中に混ぜたままにしている会社は、驚くほど多くあります。
シーズン明けに、必ずやるべき1つのこと
記憶が新しいうちに、ピークのSKU別実績を「欠品(あと何個売れたはずか)」と「残在庫」の両面から同じ一枚の表で振り返ることです。この表がそのまま、翌年の投入量とコア/可変の仕分けの設計図になります。多くの会社はピーク明けの疲労でこの振り返りを飛ばし、記憶が薄れた頃にまた「予測の精度」の話を始めます。閑散期は休む時期ではなく、設計の時期です。
まとめ
季節集中型の需給は、予測ではなく、供給の時間軸・SKUの二層化・配分ルールという3つの設計で決まります。難所は明確で、年間のS&OPを組む作業は、目前のピークを回しながら片手間でできるものではなく、製造・営業・外商にまたがる利害の調整を伴うことです。着手のタイミングは閑散期しかありません。まず直近シーズンの欠品・値引き・滞留を金額で振り返るところから──その一枚の表は、売上在庫診断「URESUJI」が1日で作ります。次のピークはもう決まっています。設計に使える時間は、そこから逆算した残りだけです。30〜60分の無料ヒアリングからご相談ください。
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