若者の消費行動についての分析はメディアでよく取り上げられているが、個人資産を多く持つミドル&シニア世代の消費行動についての視点は見落とされがちである。戦後に生じた様々な景気動向や技術革新をいつ・どんなタイミングで経験したかが、価値観や消費意識に影響を与えていることを念頭に置き、ミドル&シニア世代の消費モチベーションを探っていきたい。

まずは、野村総合研究所が1997年から3年に1回実施している「生活者1万人アンケート」2019年版の結果を見てみよう。

各世代の定義は様々あるが、上記アンケートでは団塊世代1946〜1950年生まれ、ポスト団塊世代1951〜1959年、バブル世代1960〜1970年としている。

【世代別分析から見た消費行動の展望】
団塊世代(71〜75歳)
世代別分析の結果:
・「男は仕事、女は家庭」の性別役割分業意識から、夫婦歩み寄りの価値観へ
・定年後の時間とお金の余裕を得て、趣味などの活動に積極的に取り組む
・スマートフォン普及率は3割程度
今後の消費行動をめぐるポイント:
・「夫婦お互いのために」「夫婦で一緒に」をテーマにした商品やサービス
・情報源はテレビ、雑誌、チラシ
・健康に関する商品やサービスを中心に「定期購入サービス」にチャンスがある

ポスト団塊世代(62〜70歳)
世代別分析の結果:
・団塊世代よりも夫婦歩み寄りの価値観が強い
・国内旅行を趣味とする人が大きく増加
・スマートフォン普及率は6割程度
今後の消費行動をめぐるポイント:
・時間的な余裕が増えるので「人のつきあい・交際費」にお金をかけたい人が多い
・情報源はテレビ、雑誌、チラシ、インターネットはPCからアクセスする傾向が強い

バブル世代(51〜61歳)
世代別分析の結果:
・団塊世代が持つ伝統的な価値観から解放され、組織よりも個を重視する
・右肩上がりの消費生活を謳歌して成長、他人にどう見られるかを気にする
・スマートフォンの普及率は8割で、平日のインターネット利用時間は1日100分程度
今後の消費行動をめぐるポイント:
・ブランド志向が強く百貨店に回帰している
・「人のつきあい・交際費」に積極的にお金を使いたい
・情報源はテレビとインターネット

※()内の年齢は2021年現在

この結果から読み取れるのは、ミドル&シニア層が時間と資金に余裕があること、そして実店舗での買い物や交際費などリアルな場面での消費を好むことだ。

現在のミドル&シニア層は行動力に長けている人が多い。男女とも実年齢より若く見える人が格段に増えている。そんなアクティブな価値観を持ち、家族や友人とのつきあいを重視する世代には、「繋がりをテーマにした商品やサービス展開」が有効だと見られる。

全世代でスマートフォンの普及が進んでいるものの、多くがメールの送受信や天気・ニュースの確認に留まり、SNSやECサイトを使いこなすまでは至っていない。まだまだ情報源としてテレビや紙媒体の存在感は大きい。販促手段としてはメルマガなどのネット媒体よりも、手紙やイベント開催など「実際手にできる・話せるというコミュニケーション方法」が望ましいと考えられる。

出典:野村総合研究所「世代別分析から見た消費行動の展望 – 関係性の変化がマーケティングに与える影響」日戸浩之