売場に来るお客様は、目当ての商品を買いに来たとは限りません。街を歩いていてなんとなくお店に入ってみた、という経験は誰しもあるのではないでしょうか。売場で一番大切なことは、お客様に入店していただくことです。その第一関門を突破したら、次に商品を購入してもらえるよう、お客様の購買意欲を刺激しましょう。商品をPRするときは「シズル感」の演出を意識すると効果的です。

例えば、肉汁いっぱいのハンバーグや熱々の湯気が上がったラーメンを見たら、食べたい!と思いませんか?音や匂いなど五感を刺激されて、食欲が掻き立てられるのです。まさにこれが「シズル感」です。

この言葉は、アメリカ人経営アドバイザーのエルマー・ホイラーが提唱した営業ノウハウのひとつです。ホイラーは自身が営業マンとして働いた経験から、お客様が商品を購入する時の法則を見つけました。『ステーキは肉の質や価格で売れるのではなく、肉が焼ける時のおいしそうな音や匂いが食欲をそそるから売れる。だから商品を売る際には、お客様が商品を欲しい理由(シズル)をアピールすることが大切』だと彼は説いています。これはどんな商品にも当てはまることなので、売場でも意識してみてください。

シズル感の演出がうまい代表例は北欧家具メーカーです。これまで日本の家具メーカーでは、ソファーやベットというようにカテゴリーごとに売場を分けて販売していました。欲しい商品があるお客様には親切な設計ですが、売場を見て高揚感は感じにくいです。

一方北欧家具メーカーは、子供部屋や一人暮らしのビジネスマンなどテーマを持った部屋をトータルディスプレイしており、お客様を部屋の中に引き込む魅力を持っています。テーブルデコレーションが参考になる!こんな部屋に住んでみたい!というように、商品を買った先にある生活をイメージさせることでシズル感を演出しています。使うイメージができた商品は実際に使ってみたくなるものです。人間の感情に訴えかけ購買意欲を高めている優れた仕掛けです。子供達に混じって大人も様々なテイストの部屋を巡り、楽しそうにしている様子を見ると、家具メーカーではなくテーマパークのように感じます。

売場でシズル感を出すためには、お客様がワクワクする仕掛けや見せ方を考える必要があります。商品それぞれに考えるのが難しい場合は、コレクションという塊で見せることで、世界観や迫力を伝えやすくなります。商品の価格や機能を訴求するだけでなく、その商品によってもたらされるメリットや高揚感をお客様視点で考えPRしましょう。